http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/64_15175.html
東京帝国大学文科大学英文学科出身のこの秀才は。(当時、同学科は一学年数人のみしか合格者を出さない難関であったそう。卒論は「ウィリアム・モリス研究」。)27歳頃から統合失調症の前兆が見られ、短編『影』には症状が克明に記されている。彼が患ったのは注察妄想だそう。
36年の生涯を薬物自殺で閉じた芥川龍之介は遺書で、次のように書いている。
・誰もまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない……僕は君に送る最後の手紙の中に、はっきりこの心理を伝えたいと思っている。(中略)君は新聞の三面記事などに生活難とか、病苦とか、或は又精神的苦痛とか、いろいろの自殺の動機を発見するであろう。しかし僕の経験によれば、それは動機の全部ではない。のみならず大抵は動機に至る道程を示しているだけである。(中略)少くとも僕の場合は唯ぼんやりした不安である。何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安である。(或旧友へ送る手記)
これらの言葉を遺稿に残したこの傷つきやすい作家に人生は、重荷だったと思うな。